株式会社KPMG FASは、監査・税務・アドバイザリーを世界規模で提供するKPMGのメンバーファームとして、日本国内でM&A(企業の合併・買収)や事業再生を支援する「ディールアドバイザリー」を中核に据えたプロフェッショナルファームです。M&A件数が過去最多水準で推移する近年の市場環境を背景に、財務・会計の専門性とディール実務を武器とするFAS(フィナンシャル・アドバイザリー・サービス)への転職注目度は高まっています。

一方で「KPMG」と一括りに語られることが多いものの、KPMG FASと、総合コンサルティングを手がけるKPMGコンサルティングは、別法人であり、求められる専門性もキャリアも異なります。転職を検討する際にはこの構造を理解することが出発点となります。

本記事では、VOLVEの視点から、KPMG FASへの転職に必要な情報を、公式採用ページ・会社概要と業界各種ソースを照合しながら整理しました。「M&A・財務の専門ファームとしての性格」「年収はどの程度か」「選考は戦略ファームとどう違うのか」を、ファクト先行で解説します。

KPMG FASとは

KPMGジャパンにおける位置づけ

KPMG FASは、KPMGジャパンの中でディールアドバイザリー領域を担う中核法人です。公式の会社概要では、「企業戦略の策定から、トランザクション(M&A、事業再編、企業再生等)、ポストディールに至るまで、企業価値向上のため企業活動のあらゆるフェーズにおいて総合的にサポートする」と説明しています。加えて、不正・不祥事の調査と対策支援(フォレンジック)も提供しています(KPMG FAS公式「会社概要」参照)。

KPMGジャパンは、あずさ監査法人、KPMG税理士法人、KPMGコンサルティング、KPMG FAS、KPMG Forensic & Risk Advisoryなど、監査・保証/税務/アドバイザリーの3分野にわたるプロフェッショナルファームで構成され、日本全体で約11,500名を擁する企業グループです。このうちKPMG FASは「M&A・ディール・事業再生に特化した会計系アドバイザリーファーム」であり、IT・業務改革・全社変革などを広く手がけるKPMGコンサルティングとは別法人・別キャリアです。なお会社設立は2001年9月で、2026年9月に設立25周年を迎えます(月刊 経団連 2025年11月号「新会員紹介」)。

同じKPMGジャパンでも、総合コンサルティングを担うKPMGコンサルティングは別法人であり、案件の性格も求められる専門性も異なります。そちらのキャリアを検討する方は、関連記事「KPMGコンサルティングへの転職|選考プロセス・年収・キャリアパス」で、部門構成・年収レンジ・選考フローまで確認できます。

企業概要(2026年8月時点)

項目

内容

会社名

株式会社 KPMG FAS

設立

2001年9月

資本金

9,450万円

代表取締役

澄川 徹/森谷 健/Paul Ford(2026年7月1日付)

主な拠点

東京(大手町)・大阪・京都・名古屋・福岡

従業員数

1,231人(2025年8月1日時点)

事業領域

経営戦略、M&A/PMI、事業再生・事業変革、フォレンジック

グループ

KPMGジャパン(KPMGのメンバーファーム)

(出典:KPMG FAS公式「会社概要」、KPMG FAS公式プレスリリース「代表取締役変更のお知らせ」(2026年6月11日)。設立・資本金・従業員数は月刊 経団連 2025年11月号「新会員紹介」の掲載値です。)

KPMG FASは2026年6月、代表取締役の変更を公表しました。長年代表取締役を務めた知野雅彦氏は、2026年6月30日付でKPMG FAS代表取締役を退任しています。知野氏は後述するKPMGアドバイザリーホールディングス株式会社の代表取締役社長を2025年12月の事業開始時から務めており、今後はグループのアドバイザリー領域の統轄に軸足を移すことになります。あわせて岡田光氏が取締役会長に就き、新たにパートナーの森谷健氏とPaul Ford氏が代表取締役に就任、澄川徹氏は留任しています(いずれも2026年7月1日付)。

アドバイザリーホールディングス設立という最新動向

2025年11月、KPMGジャパンはアドバイザリー領域を統轄する「KPMGアドバイザリーホールディングス株式会社」の設立を発表し、2025年12月1日より事業を開始しました。代表取締役社長は知野雅彦氏です。KPMGコンサルティング、KPMG FAS、KPMG Forensic & Risk Advisoryなど複数法人を束ね、約5,000名のアドバイザリー人員が法人間の垣根を越えてワンストップでサービスを提供する体制を整える狙いです(KPMGジャパン公式プレスリリース)。

この動きは、KPMG FASが今後さらにグループ横断のディール・変革案件に関与しやすくなる可能性を示唆します。ただし2026年8月時点で、KPMG FASとKPMGコンサルティングが採用・人事制度上で統合されたわけではなく、転職活動上は引き続き別法人として捉える必要があります。

戦略コンサルと総合コンサルの違い、そしてその中でFASがどう位置づくかについては、以下の関連記事もあわせて参照ください。

関連記事:戦略コンサルと総合コンサルの違い

案件・カルチャーの特徴

4つのサービス領域

KPMG FASは、提供するサービスを公式に大きく4つの領域に整理しています(KPMG FAS採用サイト「事業領域」)。

  • 経営戦略(ストラテジー):成長戦略・事業ポートフォリオ・M&A戦略の策定支援
  • M&A/PMI:M&Aの企画から実行、買収後の統合(PMI=買収後に組織や制度を統合し、想定したシナジーを実現する一連の取り組み)まで
  • 事業再生・事業変革(リストラクチャリング):業績不振企業の経営改善・財務リストラクチャリング・ターンアラウンド支援
  • フォレンジック:企業内の不正・不祥事の調査と防止策の策定

このうちM&A/PMI領域は、財務・ビジネス・人事など各分野のデューデリジェンス(買収前に対象企業の実態を精査する調査。以下DD)を起点に、企業価値評価(バリュエーション)、契約交渉支援、PMIまで一気通貫で手がける点が特徴です。

部門(チーム)別の業務内容

KPMG FASの中途採用は部門単位の通年採用で行われるため、どの部門に応募するかが、そのまま入社後の業務内容を決めます。公式の中途採用(通年採用)ページで募集単位として掲げている8部門は、それぞれ次の業務を担っています。

部門

主な業務

募集要項で想定されている経験

Corporate Finance

国内外のM&A(合併・株式交換・会社分割・買収・売却・資本提携)に関するファイナンシャルアドバイザリー、企業・事業価値評価、無形資産等の評価、ストラクチャリング

M&A・企業再生アドバイザリー、バリュエーション、財務DD、金融機関の融資・不良債権処理、経営企画・投資審査などで3年以上

Transaction Services

M&Aにおける財務DD。ビジネス・IT・人事のDDと連携し、対象企業の収益力・財政状態・リスクを精査

公認会計士(または同等の会計知識)+Big4監査法人での実務経験。金融セクターの監査・DD経験は優遇

Turnaround & Restructuring

事業再生・事業変革アドバイザリー。事業の継続/売却/清算といった戦略オプションの検討、私的整理・法的整理の支援、中期経営計画の策定と実行支援、投資検討・バリューアップ・Exit支援。大阪・福岡では事業承継アドバイザリーも

金融機関の法人向け業務で3年以上、Big4監査法人経験のある公認会計士、戦略プロジェクト経験者、事業再生・M&A FA経験者

Forensic

不正・不祥事の事実解明調査(第三者委員会による調査を含む)と予防・発見体制の構築支援、デジタルフォレンジック、サイバーセキュリティ、ビッグデータを用いた不正モニタリング

会計士のほか、ITコンサルタント、サイバーセキュリティ、ソフトウェア資産管理、コーポレートインテリジェンスなど職種別に募集

Strategy

経営・事業戦略の立案、M&AにおけるビジネスDD(BDD)と事業計画策定、買収後・売却前のバリューアップ、PMI/セパレーションの実行支援。人事・IT・サプライチェーン・財務・マーケティングの専門チームを擁する

論理的思考力とTOEIC800点程度の英語力を共通要件とし、ジュニアアソシエイトからディレクターまで幅広く募集

Financial Services Group

銀行・保険・証券・ノンバンクなど金融セクターに特化した財務DD・PMI・バリュエーション・M&Aアドバイザリー・成長戦略。業種固有の規制環境を踏まえた案件設計が中心

公認会計士等の資格+金融業の監査・アドバイザリー経験2〜3年以上、TOEIC800点程度

Client Value Analytics

データ分析によるディール・戦略支援。売上/収益性分析、運転資本の最適化、事業ポートフォリオ管理のほか、価格最適化・需要予測・サプライチェーン最適化などのソリューション開発

データサイエンティスト(統計解析・機械学習で2年以上、Python/R)、データストラテジスト(コンサル・DD・事業再生・FP&Aで2年以上)など

CSS-AIX(AI Transformation)

M&A・戦略コンサルティング領域におけるAIによる業務変革と新規ビジネス創出、自社AIプロダクトの開発、クライアント向けAI/SaaSソリューションの設計・導入

アプリケーション開発(Python/TypeScript等)2年以上、ITインフラ設計・運用、AIを用いた業務改革の推進経験

(出典:KPMG FAS 中途採用(通年採用)の各部門募集要項)

この一覧から読み取れるのは、同じ「KPMG FASへの転職」でも、入口となる部門によって求められる経験がかなり異なるという点です。公認会計士+監査法人経験を要件に掲げるTransaction ServicesやFinancial Services Group、金融機関での法人業務経験を挙げるCorporate FinanceやTurnaround & Restructuring、英語力と論理的思考力を共通要件とするStrategy、開発実務経験を求めるClient Value AnalyticsやCSS-AIXというように、要件の立て方そのものが部門ごとに違います。応募先を検討する際は、ファーム単位ではなく部門単位で募集要項を読み比べるのが実務的です。

なお、KPMGジャパンにはフォレンジックを専門とするKPMG Forensic & Risk Advisoryも別法人として存在します。KPMG FASのForensic部門とは採用が別々に行われているため、フォレンジック志望の場合はどちらの募集かを確認してください。

戦略ファームとの案件性格の違い

戦略コンサルティングファームの案件が「経営課題に対する仮説検証・提言」を中心とするのに対し、KPMG FASの案件は、財務・会計・M&Aプロセスという実務の専門性が中核に置かれる点が大きく異なります。たとえばM&Aであれば、対象企業の財務諸表を精査し、リスクや収益力を定量的に評価し、買収価格や条件の妥当性を判断するといった、数字と会計に深く踏み込む作業がプロジェクトの土台となります。

そのため、在籍者には公認会計士、投資銀行のM&A部門(IBD=Investment Banking Division。企業の資金調達やM&Aを助言する投資銀行業務部門)出身者、事業会社の財務・経営企画出身者、コンサルティングファーム出身者など、財務・ディールに親和性の高いバックグラウンドを持つ人材が多いです。

同じBig4系のFAS・アドバイザリー法人と横並びで比較したい方は、関連記事「デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー(DTFA)への転職|選考プロセス・年収・キャリアパス」「PwCアドバイザリーへの転職|選考プロセス・年収・キャリアパス」も併せてご覧ください。サービス領域の切り方・年収レンジ・選考の力点の違いが比較できます。

インダストリー・グループ制と専門性

KPMG FASは、業種別に専門人材を集めた「インダストリー・グループ」体制をとっています。公式サイトでは、自動車、消費財・小売、エネルギー・化学、金融、ヘルスケア・ライフサイエンス、製造、商社、不動産・インフラ・物流・ホスピタリティ、テクノロジー・メディア・通信、プライベートエクイティの各グループが掲げられており、業種特有の知見をディール案件に結びつけています(KPMG FAS公式「インダストリーグループ」)。M&Aやバイアウト(投資ファンド等による企業買収)に関する書籍・寄稿・セミナーもパートナー陣が多数手がけており、業種知見を外部に発信することにも積極的です。

働き方とカルチャー

案件はディール進行に左右されるため、DD期間や契約交渉の山場では業務負荷が高まります。一方で近年は、2-2で挙げたClient Value AnalyticsやCSS-AIXのように、分析・AI領域の専門部隊が独立した募集単位として置かれており、作業の自動化・高度化への投資も進んでいます。

年収・職位体系

職位体系と年収レンジ

KPMG FASは年収を公式に開示していないため、以下は元社員ヒアリング・業界調査・口コミサイト集計を総合した目安です。職位は概ね「アナリスト → アソシエイト → シニアアソシエイト → マネージャー → シニアマネージャー → ディレクター → パートナー」というステップで進みます(Strategyなど一部の部門では、アナリスト相当の職位を「ジュニアアソシエイト」と呼びます)。職位別の年収レンジの目安は次の通りです。

職位

年収レンジ(目安)

アナリスト

約500万〜650万円

アソシエイト

約650万〜900万円

シニアアソシエイト

約900万〜1,200万円

マネージャー

約1,200万〜1,600万円

シニアマネージャー

約1,600万〜2,100万円

ディレクター

約2,100万〜2,800万円

パートナー

約2,800万円〜

(注)上表は、年俸(固定部分)と業績賞与を合算した想定年収です。

報酬構成と年収の振れ幅

KPMG FASの報酬は、年俸制に業績賞与(年1回)が加わる構成です。KPMG FASは公式の募集要項で、Forensic・Client Value Analytics・CSS-AIXの各部門について「年俸制+業績賞与(年1回)」、Corporate Finance・Strategy・Financial Services Groupについて「年俸制、経験・能力を考慮のうえ応相談」と明示しています。

転職時に押さえておきたいのは、賞与の比重が大きく、同じ職位でも実際の受取額が年によって動くという点です。賞与には個人評価とファーム業績の双方が反映されるため、担当したディールの成否や在籍部門の年度業績によって差が生じます。実際、社員口コミサイトの集計でも同一区分内のレンジは大きく開いており、OpenWorkの「コンサルタント」区分では平均1,210万円に対して700万〜3,000万円の幅が出ています。

3-1の表は職位ごとの標準的な水準を示したもので、職位が上がれば下限も上がる形で切り分けています。ここに評価・業績による上下が乗ります。とくにディレクター以上は担当ディールの実績が報酬に直結するため、振れ幅はさらに大きくなります。オファー提示時には、提示額のうち固定部分(年俸)と変動部分(業績賞与)の内訳、および賞与の評価基準を確認しておくと、入社後の実感とのギャップを避けやすくなります。

中途入社時の想定エントリー職位

中途入社時の格付けは、これまでの経験年数とディール・財務経験の有無に応じて決まります。

  • 第二新卒〜社会人経験数年・ポテンシャル採用:アナリスト〜アソシエイト
  • 会計士・IBD・FAS・PEファンド・事業会社財務などで実務経験5年程度:シニアアソシエイト〜マネージャー
  • M&A実務やマネジメント経験が豊富な層:マネージャー〜ディレクター候補

実際の格付けは、選考過程の評価と現年収を踏まえて決まります。BIG4(世界4大会計事務所グループ)水準の報酬体系のため、同じ職位で比べれば事業会社より高い水準になります。ただしディール未経験からの入社はアナリスト〜アソシエイト格付けが中心になるため、現年収によっては入社時点で一時的に下がることもあります。

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選考プロセス

選考フロー全体像

KPMG FASのキャリア採用は部門別・職種別に通年で行われ、概ね以下の流れで進みます(応募者の経験・職種により差異あり)。

ステップ

内容

1. 書類選考

履歴書・職務経歴書の提出

2. Webテスト(適性検査)

言語・非言語・性格検査等(職種により有無あり)

3. 1次面接

現場マネージャー〜ディレクタークラスとの面接、職務経歴の深掘り

4. 2次面接

専門性・志望動機の確認、ケース/職務知識を問う設問を含む場合あり

5. 最終面接

パートナークラスとの面接

戦略ファームのケース面接との違い

ここがFAS転職で最も誤解されやすいポイントです。戦略コンサルティングファームの選考は、市場規模推定や売上向上策などを短時間で論理的に解く「ケース面接」が中核ですが、KPMG FASの中途選考では、ケース面接の出題はポジションによります

中心となるのは、これまでの職務経歴の深掘りと、財務・会計・M&Aプロセスに関する職務知識です。たとえば「過去に手がけたディールや財務分析の具体的な進め方」「DDで何を見るべきか」「企業価値評価の考え方」といった、実務に直結した問いが中心になります。財務・ビジネス系の簡易なケースが出題されるポジションもありますが、ごく一部です。

このため準備の中心は、応募するポジションに応じた財務・会計・M&A実務の知識整理になります。とはいえ、論点を構造的に整理して話す力や仮説思考は職務経歴の深掘りでも評価されるため、ケース面接対策で鍛える「考え方の型」は無駄になりません。

ケース面接の基礎的な考え方や準備の始め方については、以下の関連記事もあわせて参照ください。

関連記事:ケース面接対策:準備の始め方

行動面接(ビヘイビア面接)の対策

職務知識に加えて、過去の行動・経験を深掘りする「行動面接(ビヘイビア面接)」も重要です。「困難なプロジェクトでどう動いたか」「チームでどう成果を出したか」「なぜディール/FASなのか」といった問いに対し、具体的なエピソードを、状況・課題・行動・結果の順で構造的に語れるかが評価されます。志望動機については、なぜ総合コンサルや投資銀行ではなくFASなのか、なぜKPMG FASなのかを、自分の経験と接続して語れるよう準備しておくと差がつきます。

行動面接の具体的な準備方法については、以下の関連記事もあわせて参照ください。

関連記事:ビヘイビア面接の完全対策

求められる素養

公式の部門別募集要項に共通して挙げられている素養は、次の5点に整理できます。

  • 会計・財務知識:財務諸表の理解、企業価値評価、財務モデリングの素地
  • ロジカルシンキング:複雑な情報を構造化し、論点を明確にする力
  • M&A実務への適性:DD・バリュエーション・PMIといったディールプロセスへの理解または学習意欲
  • コミュニケーション力:専門的な内容を分かりやすく伝え、関係者を動かす力
  • タフネス:ディールの山場における業務負荷への耐性

公認会計士やUSCPA(米国公認会計士)の保有者は財務領域で歓迎されますが、必須ではなく、IT・人事などの専門性を持つ人材の採用も近年広がっています。

キャリアパスとポストKPMG FAS

在籍中に獲得できる専門資本

KPMG FASでの経験は、転職市場において以下のような専門性として高く評価されます。

  • ディール・スキル:DD、バリュエーション、財務モデリング、PMIといったM&A実務の一連の専門スキル
  • 財務・会計の深い知見:企業の財務実態を読み解き、定量的に評価する力
  • 業界知見と人的資本:インダストリー・グループで培うセクター知見、事業会社経営層や金融機関とのネットワーク

特に「M&A・財務の実務スキル」は市場での汎用性が高く、ポストFASの選択肢の広さに直結します。戦略ファーム出身者が「経営課題の構想力」を武器にするのに対し、FAS出身者は「ディールを実行に落とし込む専門性」を武器にするイメージです。

ポストKPMG FASの主な進路

社内でパートナーを目指す道に加え、外部への進路も多様です。主な進路は次の通りです。

  • PEファンド(プライベート・エクイティ。未上場企業へ投資し価値を高めて売却する投資ファンド):投資検討やバリューアップ(投資先の企業価値向上)に、DD・バリュエーション経験が直結
  • 事業会社の経営企画・M&A部門:自社のM&A戦略・実行を担うポジション
  • 他のFASやアドバイザリーファーム:より上位の職位や、特定領域への専門特化
  • ベンチャーキャピタルやスタートアップのCFO/経営層:財務の専門性を経営に活かすキャリア

同じPEファンドでも、外資系PEは投資銀行・戦略コンサル出身者が多く、日系PEとは出身者の傾向が異なります。英語力やバックグラウンドによって現実的な選択肢が変わるため、「PEか事業会社か」という粒度ではなく、ファンドの系統まで踏み込んで検討するのが実務的です。

ポストコンサル・ポストFASのキャリアパス全般については、以下の関連記事もあわせて参照ください。

関連記事:ポストコンサルのキャリアパス

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【Q&A】KPMG FAS転職に関するよくある質問

Q1. 公認会計士でないと応募できませんか?

必須ではありません。8部門のうち公認会計士を要件に挙げているのはTransaction ServicesとFinancial Services Groupが中心で、Corporate FinanceやTurnaround & Restructuringは金融機関での法人業務経験、Strategyは論理的思考力と英語力、Client Value AnalyticsやCSS-AIXは分析・開発の実務経験を要件としています。「会計士かどうか」より先に、自分の経験が要件に合う部門を絞り込むほうが近道です。ただし会計・財務の基礎知識は、いずれの部門でも学習しておく必要があります。

Q2. 戦略コンサルのケース面接対策をすれば選考は通りますか?

ケース面接が出題されるかどうかは応募するポジションによって変わるため、ケース対策だけを積み上げても選考全体はカバーできません。優先度が高いのは、応募する部門で問われる財務・会計・M&A実務の知識整理と、自身の職務経歴の棚卸しです。とはいえ対策で鍛える構造的思考や仮説思考は、職務経歴の深掘りの場面でそのまま評価されます。

Q3. KPMG FASとKPMGコンサルティングはどちらを選ぶべきですか?

両者は別法人で、求められる専門性もキャリアも異なります。M&A・財務・事業再生といったディール領域の専門性を深めたい方はKPMG FAS、IT・業務改革・全社変革などを幅広く手がけたい方はKPMGコンサルティングが向いています。2025年12月にアドバイザリーホールディングスが設立され連携は強まっていますが、採用・人事は引き続き別であり、入社時の選択がその後のキャリアを規定する点には留意してください。

Q4. 英語力は必須ですか?

国内のディール案件を中心とするチームでは英語が必須でないケースもありますが、クロスボーダーM&A(国境をまたぐ企業買収)やKPMGグローバルネットワークとの連携案件では英語力が求められます。長期的なキャリアやポストFASの選択肢(特に外資系PEなど)を広げるうえでも、英語力は持っていた方が有利な要素です。

Q5. 激務度はどの程度ですか?

恒常的に高いというより、DDや契約交渉が走る数週間に負荷が集中し、案件の合間は落ち着く波型です(2-5参照)。面接で「直近1年の平均的な稼働」「繁忙期のピーク」「同時アサインが重なる頻度」を部門単位で確認すると、配属予定チームの実態がつかめます。

Q6. 未経験からの転職で年収は下がりますか?

現年収と格付け次第です。BIG4水準の報酬体系のため同じ職位での水準は高めですが、ディール未経験の場合はアナリスト〜アソシエイト(約500万〜900万円)からの入社が中心で、現年収が高い方は入社時点で一時的に下がることがあります。シニアアソシエイト以降の上昇幅が大きい構造なので、入社時の提示額だけでなく数年後のレンジを含めて判断してください。

まとめ

KPMG FASへの転職を検討するにあたって押さえておきたいポイントを、5点に整理します。

  1. KPMG FASはM&A・ディールアドバイザリーに特化した会計系アドバイザリーファームであり、総合コンサルのKPMGコンサルティングとは別法人・別キャリアです。
  2. サービスは経営戦略・M&A/PMI・事業再生・フォレンジックの4領域。実際の募集は8部門の単位で行われ、部門ごとに求められる経験が異なります。
  3. 年収は公式開示がなく職位別レンジは目安。アソシエイトで約650万〜900万円、マネージャーで約1,200万〜1,600万円が一つの目安です。年俸制に業績賞与が加わる構成で、賞与の比重が大きい点も押さえておきたいところです。
  4. 選考は戦略ファームのケース面接型とは異なり、職務経歴の深掘りと財務・M&Aの職務知識が中核。行動面接の準備もあわせて重要です。
  5. ポストKPMG FASはPEファンド・事業会社のM&A部門・他FASなど。M&A・財務の実務スキルが市場価値の核になります。

KPMG FASの選考は、部門ごとに求められる経験が大きく異なります。どの部門を入口にするかの見極めが、選考の通りやすさにもその後のキャリアにも直結します。VOLVEでは、戦略コンサル業界出身のアドバイザーが、KPMG FASへの転職を一緒に考えます。

参考文献・出典

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